2008年6月2日月曜日

昔の日記;スティング2005年"SACRED LOVE"関東公演

2005/1/22(sat)23追記

いちおう今回のツアーも書いておく必要はあるかもしれない、と思って書く。忘れた頃にやってくるスティングだが、前は世界ツアーのしょっぱなとか結構優遇されていた日本もすっかり中盤の、いい意味ではこなれて、悪い意味ではオシゴト色が強くなった時期に回されるようになった。東京周辺公演の数が1回減ったのも(まあ前回の横浜は余りに場所が悪かったけど・・・アリーナでなく国際会議場でやってしまったのだ、クラシック用ホールで)チラシ配布が無くなったのも、招致事務所が変わったとかそういう理由だけではあるまい。1週間という長期、しかも広島とか福岡までカバーするというサービスぶりではあるものの、余り話題を提供することなく正直地味な活動にてっするという印象が強いのである。

本国ではしっかりやった自著サイン会も人数時間限定、しかも「予め」自著購買者のみ「抽選」、という商売気。本は会場でも売り、そこには漏れなく直筆サインという信じられないサービス・・・というか商売気なのである。ワタシは3冊買うはめになった。。確かに労作で大作で、訳もよく、また数々のアルバムで暗喩的に示されていた内面が余りにあからさまに曝け出された内容は、今の決して表情や佇まいを崩さない、計算され尽くしたことしかしない痛々しい迄のショウマンシップ、イメージ保持の努力の結果としてのギグからは決して伺い知ることのできないものであり、そういうものを世に出す事ができたという強い思い入れの結果なのだと好意的に捉える事もできるかもしれない。その意味では素晴らしいのであるが。

この著作を読めばわかるとおり、まあ他の人の書いた伝記本でも或る程度触れられていたことなのだが、余り恵まれた家庭に育たず、長い下積みの中で家族を養わなければならなかった経験を持つ苦労人であり、金にひときわ拘るのは今や「スティング」という巨大ブランド・商業体になってしまった、その背負うものを考えると当たり前なことなのだが、それにしても今回の異様なグッズの多さ、高さ!カンバッジ1000円は確かに外タレには珍しくないが、ポスター集10000円バラ売り無しだとか、シャツ10種以上とか(珍しくメッセージTが売っていたがツアーTより1000円高い!でもさすがセンスいいから買った)凄い数・値段なのなんの。昨日は全然そんなでもなかったが(グッズ売り場一番乗りでしたワタシ)プラチナチケット寸前状態の今日は長蛇の列が出来ていた。

そう、今回は非常にチケット確保が困難だったのである(ただ例によって裏技が多く、特にNYにできた(ほんとアメリカで受けがいいよな)ファンクラブ経由だと思い切りイイ席がとれたらしい)。だから結局ナマ声の聞こえない場所しか押さえられなかった私はテンション低いのだが、4年ぶりというのは確かに長かったというか(私には予想通りだったが)、ファンは待ち望んでいたということなのだろう。心なしかへっぽこ席でも周りに初心者的な人は殆どいなかった感じである。

内容的にはちょっと新味を加えた事が裏目に出ている気もした。定番曲はやはり定番曲としてやってほしい。englishman in NYとかmagic、every breath you takeは確かにやっていた。でもenglishman in NYはスティングのわかりやすい振り付け(ちなみに今回芝居がかった振り付けが割合多く、舞台装置も大掛かりで物凄く映像を使っているのだが、映像は基本的に歌詞の説明をアーティスティックに視覚化して作られており、言葉の壁を飛び越えたいという古くからのこの人の理念が表れていた。「愛」なんて文字が出て、思わずクラブ愛を思い出した私はもうスティングファン失格か??)や中盤のジャズ・ピアノからロック・ドラムの部分のヴァリエイションが聞き物だったものの短く、後者二曲は殆ど工夫無くそのままやられていた。とくに私がポリスで一番好きなmagicが余りに流すようにそつなく終わってしまったのは哀しかった。「孤独のメッセージ」のほうがむしろしっかり表現されていたように思う。

私がこのバンドが来るたびに楽しみにしている一番のものはbring on the night~when the world is running down,you make the best of what's still aroundのメドレーで展開されるピアノ・インプロヴィゼイションなのだが、今回は新曲の中に断片的に吸収されてしまい、メインプロの座から引き摺り下ろされてしまっていた。同様に戸惑うファンの姿も見られた。そしてかわりにメイン(本編フィナーレ)になったのは何とロクサーヌである!!寧ろストレートにやるのがいい粗削りな出世作をこれでもかというほど長々とやって、照明も赤い灯火の下で男を誘う売春婦の雰囲気など微塵も無い派手さなのだ。赤い板が上がったり下がったりとか、「えー・・・」と思いつつもいつもの呼応を叫んでいた私だったが、ちょっとイマイチだった。

最近ホーンセクションが無いことが多い。そのかわりにシンセが常駐するようになり、今やスティングの片腕で人気のキッパーが座につくようになった。スティービー・ワンダーがハーモニカを吹いていたbrand new dayもシンセで代用。その他挙げればきりがないが、とにかくちょっと電子色が強い。最新アルバムを聞けば誰しもそう思うだろう。電子音バリバリの「ジュリアナ・トーキョー!!」みたいなsend your loveで始まるところからしても、ここのところの基本線アコースティックというイメージから大きく逸脱。

その最新アルバムもセールス的には前作に及ばず、収録曲にかんして今日はさすがに盛り上がったが昨日は余り盛り上がらなかった。コレ、という決め手が無いというか、「染みる曲」「ガっとストレートに盛り上がる曲」が少ない。曲数の少なさのせいもあるかもしれない。目新しさとしては二人ないし三人の女声ボーカル/コーラスが加わっているところで、NYでは懐かしいwe'll be togetherなんかで威力を発揮していたようだが、まるで浮気のようなデュエットを演じるところなどまた芝居がかっていていかにもスティングらしい一方、違和感を感じるところもあった。曲がそうなんだけれども、メロディを完全に黒人女声ボーカリスト(なんで黒人女性ボーカリストってみんなあんなに凄いんだろ)に渡してしまう部分が目立ち、昨日なんかは客席が醒めてしまったりもしていた。ソウルでファンキーで私は大好物分野だから楽しかったのだが、確かにラインはスティングだけど、ほんとにスティングなのか?という戸惑いを感じた。でもこうやって変わってきたのがスティング、いわば過渡期なのかもしれない。ドラムセットが二つ両翼展開していたが(正確には片方はパーカスのセット)、うるさい、という声も周辺で聞かれた。私も余り意味を感じない。リズム強調は一層スティングの志向の変化を示していたが、激しいドラムアクションも冒頭だけで、もったいないというか・・・。しまいにはパーカスはボンゴ抱えてドラムの下に蹲ってしまった。

フラジャイルが真ん中に配置され、しかもスティングのソロだけじゃなかったことには誰しも違和感を感じただろう。これも前述の定番のひっくり返しである。ではアンコール終曲は何だったかというとthousand years。悪くはないが、前回ツアーの最初の曲、内容的にはおかしくはないものの、ん?という感じだった。暗転してさっと明るくなったら既にメンバーが整列して手つないでお辞儀、そしてさっさとはけていくところなどいかにもオシゴト終わり的な雰囲気を醸していてちょっと・・・だった。全部で110分といったところ。曲数の違いから初日はもっと短い(初日は調子を崩していたようだ)。前回よりはやや短いか。

終わりに触れたので最初にも。今回は殆ど遅れず、5分過ぎくらいでいきなり始まるという不思議な几帳面さだった。おかげで昨日など席につけないアリーナ客多数。昨日は遅かったからそうせざるを得なかったのかもしれない。ちなみに昨日はそうとう早く着いてしまったのだが、なんとリハを暫く外から聞くことができた。かなりしつこくやっていて、おお、と嬉しくなってしまった。だが昨日については会場の乾燥や恐らくスティング自身の体調が悪かったようでミスもいくつかあった。だがサイン会でリハできなかったはずの今日はカンペキ。うーん、やっぱ会場の熱さに呼応して調子も治るのかもしれない。

スティングは若返っている!やや痩せたように見える。肩を見せないスーツに開襟シャツという伊達男スタイルで筋肉も見えない。かなり胸が薄く体も手足も細いハンサムそのもの。胸が大きく開きポケットに赤いハンカチを見せているのはまるで「さらば青春の光」の年代のイギリスのコウコウセイを見るよう。髪の毛もひっつめてアルバムのジャケットくらいにまとめられており非常にきっちりキメている。その点昔を思い出した。さすがに皺が目立つけど彫りの深い顔付きや表情の豊かさが十分カバーして、アクションの若々しさも前回のマッチョおじさん系とは違っている。

リリース後じつに1年4ヶ月、その間にいつも通りより高い完成度を求めて変遷していったであろうステージ、時期的にも一応の完成形を見る事ができたということで、とりあえず納得しておきましょう。

(追記)最終公演はプラチナになった二日目並に盛り上がった。満員御礼状態。演奏自体も盛り上がり、特にレベッロのピアノがさえまくっていた。when the world~のインプロではケニー・カークランドに敬意を表してかそのスタイルで演奏し喝采を受けていた。業師だ。照明にアクシデントはあったがおおむね巧くいったといえよう。心なしか長かった感じもするがそれでもせいぜい5分くらいか。

曲目:

(thousand years(導入曲、インスト部分))

send your love

message in a bottle

(初日のみ省略) if you love somebody,set them free

mercury falling

(メンバー紹介)

dead man's rope(部分的にwallking on the moon)

brand new day

shape of my heart

englishman in New York

fragile

fields of gold

sacred love

whenever I say your name(ジョイ・ローズとのデュエット)

every little thing she does is magic

never coming home(途中when the world is running down,you make the best of what's still aroundの超キモチイイ定番インプロ挿入、余りモダンに崩さない聴き易い正統派ジャズピアノが印象的。流れるようなキータッチ。ドミニクのソロもちゃんと入ってます。)

roxanne

(殆ど間をあけずアンコール)

desert rose

if I have a lose my faith on you

every breath you take(最後メンバー紹介)

(殆ど間をあけずアンコール2)

thousand years

(一瞬暗転して整列、挨拶して終わり)


データ:

ヴォーカル、ベース:スティング

ギター:ドミニク・ミラー

ドラムス:キース・カーロック(若い。パワードラムス。マヌ・カチェみたいなノリにはまだちと及ばないかも)

パーカス:ラニ・クリヤ(若い。アラブ系の曲で威力発揮。でも一番地味)

ピアノ、キーボード:ジェイソン・レベッロ(太った。そのせいか安定感がありケニー・カークランドをいっそう感じさせるスタイルになった。凄く馴染んだ印象。)

キーボード(シンセ):マーク・(キッパー)・エルドリッジ

女性ヴォーカル:ドナ・ガーディアー(アルバムではコーラスに参加、歌いまくり)、ジョイ・ローズ


ドミニクがクラシカル・アルバムを出したのは記憶に新しい。他のメンバーも(若返っているからそれほど無いが)個人活動をしている人もいる。

0 件のコメント:

SwingOutSisterの世界

Jamiroquai

Banner 2 Banner 1 go!